『音楽への憎しみ』を読んだ
published: 2023-05-20
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だいぶ前、図書館の蔵書検索で『地下世界をめぐる冒険』を検索したときに蔵書がないことは確認したのだが、最近入荷されていることに気づいた。 技術系の本ではないため新規購入依頼を躊躇していたのだが、勝手に入荷されるくらいならがんがんリクエストしたほうが良いなと思ったので、高い本をいくつかリクエストした。
そのうち1冊がパスカル・キャニールの『音楽への憎しみ』だ。 伊藤計劃の『虐殺器官』に引用されており、また多くの影響を与えていることが感じられた。
本編は断章形式で構成されており、大量の引用と詩的な表現に溢れている。
まず第一に、虐殺器官の憂鬱な空気感はここから来たんだなと思った。 聖書や古典から人間の残酷な本質に迫っていく、仄暗い雰囲気。
また、言語から意味を剥ぎ取った先に、音本来の、音楽の力があるというのが面白かった。 虐殺の文法は文法ではなく音楽なのでは?
紀元前から現代の文章まで多くの文章を飛び回り、美しい表現でまとめ上げている様子がすばらしかった。 著者の他の作品も読みたいし、虐殺器官も読み返したい。