反出生主義について考える

気持ちが落ち込んでたときに反出生主義を知り、気持ちが安定したあとも囚われ続けている。 多分今後も反出生主義への考え方は変化していくだろうから書き残しておく。

基本的非対称性

ベネターの反出生主義。一番ガチっぽい。幸福の存在と不幸の不在は不幸の不在のほうが倫理的に優れているというところから反出生を導く。

聞いているとそうなのかなという感じがするけれど、直感的には受け入れ難い。 どんなに幸福でも針一つほどの苦痛があれば台無しになるという主張はよくわからない。

ロシアンルーレット型

これに囚われている。

大抵の場合幸福に生きることができても、不幸になる可能性はゼロにはならない。 ゼロでない以上、生まれてくるものの同意を得ずに生を強要することは、無許可でロシアンルーレットを引き続けるようなものだという理屈。

基本的非対称性と違って社会の変化によって否定できる可能性がある。 科学の進歩によって不幸になる可能性がなくなった世界というのは想像可能だ。 だから今は生み続け、文明を進化させようという理屈だ。が、私はそこまで楽観的になれない。

なにより精神病が怖い。幸福を感じる器官である脳が根本から壊れてしまうリスクがあり、そのリスクと向き合うためには意識とは、人間性とは何かと向き合わなければならない。 それが一番恐ろしい。

誕生肯定の作品について

例えば死にたい発信する人は死にたいという気持ちもあるのだろうが、それ以上に死にたいと思いたくないという気持ちがあるんだと思う。 それと同じように、私は反出生主義に囚われているが反出生主義から抜け出したいと思っている。 だから、誕生肯定をしてくれる作品が好きだ。

反出生主義は最近の流行りでもあるし、これを取り入れた作品も増えていくと思う。 最近目にしたコンテンツだとサンホラ、進撃、黄金虫変奏曲もそれがあった。

サンホラは結局どちらが倫理的に正しいとかの答えは出していないと思う。 ノエルが母の手紙を歌い上げる「ごめんね母さん許してねこんな子生まれなければよかった」のメロディで、「生まれちゃいけない命 そんなもの在りはしないと」と歌ってはいるが、そういう物語があり、そういう物語が美しいというだけで倫理的正しさについては何も答えていない。 絵馬では、生まれることで不幸になるルートもきちんと描いているのが良いと思った。

進撃も、反出生の否定は物語を愛する、瞬間瞬間を肯定するような感じだった。 ジークの否定は駆け足感があったが、作者はもっと考えてるんだろうなと思った。

誕生肯定の作品は美しい。理屈でどれだけ反出生について考えようが、物語の美しさですべて押し流してしまう強さがある。そういう作品が好きだ。